Holding Hunds
毎日決まった時間に呼ばれ、お決まりのゲームを繰り返す。
決まった時間に定期的に呼び出され、呼び出された四人で協力をしながら、閉鎖された空間から脱出するために文字通り必死になって立ち回っていく。
簡単に言うと鬼ごっこだ。
その四人はまとめて「サバイバー」と呼ばれる。
簡単に脱出させてもらえるわけもなく、
四人が逃げ出さないように邪魔をする存在も当然いる。
通称『ハンター』。いわゆる鬼ごっこの鬼役である。
それを無限に繰り返されている場所、
「エウリュディケ荘園」に彼、正しくは彼らは居た。
彼らは『ハンター』サイドの人間。
通称白黒無常。
ただいまゲームの真っ最中である。
「さて……今日はだれから行きましょうか……」
今日の対戦相手は、傭兵・占い師・祭司・医師である。
場所は聖心病院。
白黒無常の白の方、謝必安はぐるっと辺りを見渡し、現在地を把握する。
なるほど……では。と独り言を呟いて手に持っていた傘を遠くへ飛ばした。
「そこの暗号機よろしくな、先生」
傭兵、ナワーブにたまたま会い声をかけられたのは、医師、エミリー・ダイアーである。
彼女の専門は怪我をしたサバイバーの治療。
自分の治療もできるだけでなく、治療速度が圧倒的に早い。
ただ、試合でなかなか治療スキルをフル活用できることはあまりない。
今日の試合は誰かしら……
ジョゼフさんではないと思うけれど……
そんなことを思いながら暗号機解読を進めていたところ、真横にどこから現れたのか見慣れた傘が飛んできた。
しまった。
そんなことを思い遠くへ逃げる暇もなく傘は黒、范無咎に変わる。
「やあ先生。」
ニヤッと嫌な笑い方をし、逃げるエミリーを追いかける。
「医生は、分かりやすいんだよ」
そう言いながらエミリーを追いかける。
「おしゃべりしてると舌を噛むわよ!」
エミリーはそう言いながら板を倒した。
板を倒す際、当たったようで、スタンをくらう。
その隙にエミリーはチェイスが長く続く場所へと目指す。
チッと舌打ちを打ち、范無咎は再度エミリーの行く手を阻むようにエミリーが走る方向へ傘を飛ばした。
「いつも同じ逃げ方だからそろそろ対策されちゃいますよ。」
そう言いながら謝必安は傘でエミリーを殴る。
「まあでも、私は貴女を追い詰めるこの時間がとても好きなので楽しみましょうね。」
小さく独り言を呟いたがエミリーには聞こえていなかった。
息が上がり続けており、そろそろもう限界だ。
暗号機は残り3台。
あまり板を使ってしまうと、後々彼らに追われる人達に迷惑がかかってしまう。
ちょうどこのあたりならナワーブが助けに来やすいだろう。
そろそろダウンしても構わないかと思っていた頃に范無咎に殴られた。
「はっ、手を抜いたな医生」
そう嘲笑しながら椅子に座らせ、謝必安に変わる。
「さて、先生を囮に何人が死ぬんでしょうね。」
「…やめて」
「私、貴女のその表情にそそられるんです。」
「………………やめて」
「何だか、過去の自分を重ねて……怯えるような顔で……」
「やめてっ!!!」
エミリーの表情に満足したのか、謝必安は喋るのを辞めた。
「おしゃべりしてる場合では無いですね。厄介なのが来てしまいました。」
少し遠くの方からナワーブがこちらへ向かっているのが見えた。
「先生!」
ちょこまかと……と呟きながらナワーブを殴る。
殴られた勢いで、こちらへ向かってきたナワーブに救助してもらう。
「先生よくチェイスしたな」
「いつもみんなの足を引っ張ってばかりだから、リッパーさんに練習に付き合って貰ったの。」
じゃあ、とナワーブとは逆方向へ向かおうとしたところをナワーブに手を引っ張られる。
「こっちに、フィオナがいるから!」
手を引っ張られながら走ると、祭司、フィオナとナワーブで繋いだであろう長距離ワープがあった。
「先生、俺がチェイスするから先に」
そう言われてワープの前で手を離される。
一連を後ろで追いかけながら見ていた謝必安の心境は穏やかなものではなかった。
ナワーブがワープへ入ろうとした所を、先回りしワープを消す。
「やべっ」
ナワーブは慌てて逃げるが、完全に謝必安はナワーブをダウンさせることしか考えてなかった。
「私の医生ですよ。」
そう呟いて謝必安は傘を振った。